山口百恵デビュー30周年記念番組

年末長時間スペシャル

大和秀嗣の歌謡クロニクル

〜山口百恵の8年間〜

川・・・川瀬泰雄さん  大・・・大和秀嗣

M ♪・・ON AIRした曲です BG・・MC中にBGMで流した曲です

川瀬泰雄さんを迎えて Part 1
8<「COSMOS/宇宙」「プレイバック」>

<COSMOS/宇宙>

「百恵回帰」番組載録

大 78年明けましてシングル「乙女座 宮」となりますが、
  先程「夢先案内人」の時のイメージがあったとお話なさっていましたけれども、
  これはシングルが先にあったんですか?それともアルバム同時ですか?


川 シングルが先です。「乙女座 宮」っていうタイトルは阿木さんから出てきた
  タイトルだと思います、特に酒井さんがっていう事ではなくて。

大 ああ、そうですか・・やっぱり「1年に1回くらいは柔らかい作品も入れてみよう」
  みたいな感じだったんですかね?


川 というより、僕達のテーマが「裏切り」だったんですよ。


大 ああ・・ファン、聞き手側へのね。


川 ええ、だから過激に来ている時に、もう・・直球、直球ってやっている時に
  カーブ投げてみたりっていう・・なんかこうね皆をはぐらかす・・
  それがテーマだったんですよ。

大 ああ、なるほど・・その「乙女座 宮」をアルバム化したというか、
  宇宙を歌ったアルバム「COSMOS宇宙」。


川 「乙女座 宮」からの発想で、僕はものすごいSF好きなんですよ。
  サイエンス・フィクションがものすごい好きで、
  そういう作家の本ってもうほとんど読破してたりっていうのがあって、
  その時に「乙女座 宮」だったら宇宙行っちゃおうかって、それで「宇宙」って
  英語にすると「COSMOS」だよなぁっていうのがあって、
  じゃあそこでこじつけちゃおうかって。
  それでその前に「秋桜」があったんで萩田さんに頼んで、
  「COSMOS(宇宙)」の間奏か何かで「秋桜」のイントロか何か入れてよ
  みたいな事で、イントロのメロディーが間奏に入ってるっていう。

大 ああいうのがまたファンは嬉しいんですよね、ああいうちょっと遊んだのが。
  「百恵白書」の時でもそうですけれど、かなり曲間なんかも凝っていて、
  繋がっていたりとかクロス・フェードみたいになっていたりとか・・
  これは作り手側としてもすごい楽しかったんじゃないですかね。


川 そうですね。そういう意味では「トータル・アルバム」っていう意識で
  創ってましたから、さっきの「百恵白書」だとかこの「COSMOS」だとか
  「メビウス・ゲーム」だとかって、
  もうその辺は申し訳ないけど僕個人的に遊ばせてもらいましたっていう・・(笑)。

大 (笑)、これ帯にね、「星の化身のように 宇宙空間を漂う 百恵」と
  ありますけれども、まさしく百恵ちゃんの「百恵歌謡の中の宇宙」というかね。

川 これジャケットがこの頃アイドルのジャケットで顔が無いジャケットなんて
  考えられなかったんですよ。

大 そうですよね〜。

川 ジャケットは横尾さんに頼んで・・帯にはね山口百恵の写真がありますけれ
  ども、ジャケットそのものには百恵は全然入ってきてないんですよね。

大 びっくりしましたけど、格好いい!って思いました、当時。

川 もう本当に僕たちも「格好いいね!これ」って思いましたけれども。

大 また封入されていたポスターっていうのが、普通なら百恵ちゃんの写真って
  いうのが入っている訳じゃないですか。
  これは横尾忠則さんのこのジャケットのポスターでしたからね。

川 まあその時期の百恵だから出来たっていうのもあるんですけどね。

大 そうでしょうね・・。このアルバム本当に傑作が多くて、
  この中で百恵ちゃんは初めて作詞を してますね、「横須賀 恵」で。
  曲は浜田省吾さんの曲で「銀色のジプシー」。
  これは百恵ちゃんの当時のラジオの話によると、曲が出来ててアレンジも
  されてて、聴いていたら自然にこう・・浮かんできたのを書き留めて、
  その詞をディレクターさんに見せたら
  「いいんじゃない、使おうか」という話になったという風におっしゃって
  いましたが。


川 ええ、実はですね別の作詞家に依頼しちゃっていたんですよ。
  まだ作品は出来上がって来ていないんですけど、たぶん書くイメージで
  ずっとやってる最中に、
  百恵が書いてきた詞がよかったんですよね。
  「いいじゃない これ」と思って・・それでその作詞家にそれまでそんな事
  したことないんだけど、もう「申し訳ない!」って「実はこれいい詞が出来
  ちゃって・・他の曲でトライしてくれ」って言ったらその作詞家半分怒って
  いましたけどね(笑)。

大 ああ・・やっぱりね・・そうですよね・・。

川 とにかく「申し訳ない」って事で、その作詞家とも僕親しかったんで
  「ごめんなさい」で向こうもね「まぁしょうがないな」って許してくれたんですけど。
  その後も一緒にあっちこっち遊びに行ったりしてるので、
  全然遺恨は残してないんですけど。

大 結果的にはよかったですよね・・後、初めて来生たかおさんの作品
  「ただよいの中で」という曲も入りまして・・
  これもすごい宇宙の広がりを感じさせる名作ですね!


川 (にっこりして)いいですねこれも。

大 アレンジもいいし、曲もいいしなぁ・・

川 ええ。

大 ディレクターの前で変な言い方をして申し訳ないんですけれども、
  よくファンの方がおっしゃるんですが「捨て曲」がないんですよね。


川 ええ。

大 どれも、いいんです!

川 ないですね・・これね、僕と金塚さんと二人で全部タイトル先に
  決めたんですよ。

大 !!。あっ曲のタイトルが先に出来ていたんですか!

川 ええ、もう全部タイトル決めて、それでこういう順番にしようって。
  それでこのタイトルだったら誰がいいだろう・・っていう選び方で作家を選んで、
  それで頼んで行ったんですよ。

大 ほぉーなるほど・・。それで「宇宙旅行のパンフレット」は浜田省吾さんとか
  「軌道修正」は森 雪之丞さんとか・・選んでいったんですね。
  これでですね、僕知らない作家がいるんです。
  どうしても一人わからない作家がいるんですけど・・。


川 ああそうですか(笑)。

大 この前のアルバム「花ざかり」の時にも出てきた作家でですね、
  聞いた事ないしね・・


川 だれなんでしょうね・・(笑)。

大 「花ざかり」では名曲『青い羊歯−アジアンタム−』ですね、そしてこちらの
  アルバムでは『時の扉』という・・これも名曲なんですけれども・・。


川 名曲って言って頂けると非常に嬉しいんですが・・。

大 あの「北野 弦」さんっていう方なんですよね、ご存知ですか川瀬さん・・。

川 これね本当に今まで誰にも喋ってない事なんです。
  それで百恵本人も知らないんですけど、ええ・・「北野 弦」っていうのは
  実は私です。

大 皆さん、お聴きになりました!!百恵ちゃん知らないんですよこの事。

川 たぶん、僕と金塚さんしか知らない事なんですけど・・
  言っちゃっていいのかなみたいなとこあるんですけどね、
  殆ど時効だなっていう(笑)。
  僕バンドやってたりして結構曲も溜まってたり、暇があると曲書いたりって 
  いうのがあったんですよね。
  それでたまたまこの作家を選んでいる時に、別の作家にも発注してたん
  ですけど、実はあんまり出来が良くなかったんですよ。
  すると金塚さんが何かの時に僕の曲を聴いた事があって「川瀬さん、
  川瀬さんの曲持ってきてよって話になって。
  僕はもう自分がプロデュースしている所に、自分の曲を入れちゃうって
  いうのはかなり卑怯じゃないですか、
  お手盛り予算みたいな感じになっちゃって。
  そうすると絶対アルバムとして良い物出来ないし、作品の客観的な評価
  出来なくなっちゃうんで、
  自分の曲入れるって言うことは一切避けてきたんですよねそれまでは。
  ただ、自分で判断しちゃうと自分では全部良いと思って書いてる訳です
  から、それはちょっとマズイよって。
  「いや、川瀬さんが選ばないで私が選べばいいんでしょう。」って話に
  なって、「私の基準でダメだったらボツにするし」「それだったらいいよ」って 
  持ってきたんですよ。
  それが『花ざかり』の時の「青い羊歯−アジアンタム−」とこの曲で、
  金塚さんが選んだんですよ。
  ただ、これは絶対僕が書いたっていうとやっぱりマズイなっていうのが    
  あって・・

大 「北野 弦」ていう名前はどこから?・・

川 あの・・「アジアンタム」を作っている時に、ギターをチューニングしてて
  弦がブチーンと切れてしまったんですよね、
  それで「ギターの弦が切れた」っていうんで・・「きたのげん」っていう
  すごい・・(笑)イージーなつけ方ですけど・・(笑)。

大 本邦初公開の話でした・・川瀬さん本当にありがとうございました・・

川 あの・・聴いてる人は秘密にしといて下さい(笑)。

大 そうです・・広めないで下さい、あんまり・・(笑)。
  それでは、伊藤アキラさんの作詞で北野弦さん・・こちらにいらっしゃい
  ます川瀬さんの作曲でアレンジは萩田光雄さん。


川 未だに親友の萩田さんですらこの曲を僕が書いたっていうのは・・
  知らないです・・(笑)。

大 (笑)その貴重な曲「時の扉」お届けします。

M 時の扉

大 さて「時の扉」お届けいたしました、川瀬さんいかがでしたでしょうか・・?
  北野弦さん作曲の・・

川 大(同時に) いい曲じゃないですか・・(爆笑)

大 いい曲ですよね・・このアルバムの中にこの「時の扉」を見つけた時は、
  「うわぁ百恵ちゃんってこの曲でまたすごい飛躍したな」と思いました。

川 ああ、そうですか、それは良かったです。

大 素晴らしいロック・バラード。ありがとうございました、
  作っていただきまして。

川 いえいえ(笑)。

大 (笑)。

BG「乙女座 宮」

<プレイバック>

大 「プレイバックpart2」、これは制作がかなり大変だったと
  聴いておりますが・・。


川 「プレイバック」っていうのは、僕と酒井さんがたまたま
  スタジオでテレビ見てる時にビデオテープのコマーシャルが
  流れて、そこに「プレイバック」ってタイトルが出てきたんです
  よ。
  それで「酒井さん、このタイトルかっこいいよね」って話したら、
  「いいですねー」って言うんですよ。
  それでそのまんま二人の中には「プレイバック」ってタイトルだけは
  何となくあって、現実に作り始めたのはそこから半年位後ですけれど
  も。

大 その半年っていうのは、まあ時期を見てっていう感じなんですか?

川 その時っていうのはある程度路線が決まってて
 、「次はこんな感じで行こう」っていうのがあったんで。
  それで半年くらい先に「川瀬さん、あの”プレイバック”作りましょう」って 
  言うんですよね。
  「どういう風にしましょうか?」って言うと、「キュルキュルキュルって
  戻る様なやつ」って、それで終わりなんですよ(笑)。
  
大 本当にテープがキュルキュルキュルって戻るようなね。(笑)

川 そこから先考えなきゃいけないじゃないですか。

大 それがまた大変な作業ですよね。

川 それで酒井さん、金塚さん、僕、それから阿木耀子さんと
  「プレイバック」っていうのをどういう風に作って行こうか
  徹底的に叩き始めて、「こういう内容がいいんじゃないか」と実際には
  5曲くらい作ってるんです。
  たとえば発売された「プレイバック」の半分くらい同じやつ、
  前半が違うやつとか・・って。
  これじゃあ物足りないなって言って又阿木さんにお願いして、
  その度ごとに音録ったりしてるんですよ、オケも録って、歌入れてみて
  違うって・・。
  それで最終工場送りの前日に上がって来たのを聴いて、
  また「まだ違うね」って。
  その時は間に合わないから半分妥協しようかって所まで行ってたんです
  けれども、酒井さんも僕も結構しつこい所があって、
  「いや、もう一回やりましょうよ」ってなって、宇崎さんに作り直してもらおうと
  いう事になった。
  宇崎さんはどこかツアーに出かけちゃてて、その日の夜12時過ぎに帰って
  来るっていうんですよね。
  赤坂にあった「ニュージャパン」ってホテルがあったんですけれども、
  そこの喫茶室が夜中でもやってるっていうんで、じゃあ「そこに集合」ってなって、 
  夜中の2時に全員集合して阿木さんも、宇崎さんも。
  そこで「ここをこういう風に変えたいんだけれども」ってその話をして、
  「明日締め切りなんだけれども明日までに出来るか?」って聞いたら、
  宇崎さんも朝5時に新潟のツアーに行かなきゃいけないって言うんですよ、
  3時間位しかないって。
  「すいませんけどそこ、寝ないでがんばって下さい」っていうすごい
  残酷な・・(笑)話をして・・。
  それで本当に3時間位で作り直してくれて、宇崎さんの家のポストに入れて
  おくからっていう連絡もらってたんで、
  それを朝僕がポストに手つっこんで「あったあった」って!。
  今度は朝酒井さんの所にすっ飛んで行って、「酒井さん、どうですか・・?」
  「いいですねー」って話になって。
  
大 そこから今度、アレンジャーですよね?

川 朝6時位ですかね・・萩田さんの家に届けて、彼はいつも夜型だから
  大体午後1時位からアレンジをし始めて、
  夕方7時位からレコーディングをやってるのがその頃の彼のパターン
  だったんだけれども、朝早いうちからアレンジしてもらって夕方から
  レコーディングし始めて、夜百恵のスケジュールを押さえといて歌ダビング
  して・・。
  その後今度はミックス・ダウン、トラック・ダウンして。
  その工場へ送る係りの人が後ろに待っているんです・・。
  そこで出来上がったやつを工場に送って、やっと間に合った・・。
  最後の企画からミックス・ダウンが終わるまでがもう1日ですよ、丸一日。

大 まさしく「プレイバック・ストーリー」という事ですね・・。
  素晴らしいお話ありがとうございました。

7<秋桜>

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